経団連「グローバルJAPAN~2050年 シミュレーションと総合戦略」 その3

前回に引き続き、経団連より先月(2012年4月16日)発表された
「グローバルJAPAN~2050年 シミュレーションと総合戦略」について、
コメントさせていただきます。

前回は日本経済が将来、 恒常的なマイナス成長に陥り、
世界経済の中で相対的に地位が低下してゆく一方で、
中国、インドをはじめとした新興国の経済規模が
拡大してゆく様を見てまいりました。

そうした中で、日本が豊かで誇りある国家として存立していく為に
取り組むべき課題を、以下の4つの切り口で整理しています。


①世界の人口増と日本の人口減・高齢者人口の大幅増
②グローバリゼーションとITのさらなる深化
③中国を含むアジアの世紀の到来
④資源需給

その上で報告書では、以下の4分野14の項目について提言を行っています。

(1)人材 分野
① 女性と高齢者の労働参加、生涯を通した人材力強化を促進せよ
② 環境変化に対応した新たな人材を育成せよ
③ 教育現場の創意工夫と公的支援強化で抜本的な教育改革を実施せよ


「人材」は、「資源のない日本を支えるカギは
究極的には「人材力」」であるいう基本認識から、
今後は若者、女性、高齢者、外国人(高度人材)など
多様な労働力を活用することが大切であり、
同時にそうした人材の戦力化のための社内教育(OJT)が
重要であることが指摘されています。
そして、そうした人材が働きやすい環境の整備を行うことが
必要であることが述べられています。

また、今日のような環境変化の時代に新しい価値を生み出す
「個性」、「感性」、「柔軟な発想」と「自ら考える力」、
「予想外の環境変化にも負けない強い心(タフネス)」
をもった人材を育成することの重要性が述べられています。


(2)経済・産業 分野
④ 中国などアジア新興国の成長を取り込め
⑤ 日本の強みを活かした成長フロンティアを開拓せよ
⑥ 「ポスト3.11」のエネルギー制約を総合的に解決せよ


「経済・産業」においては、人口減少の負のインパクトは甚大であり、
日本が成長するためには、アジアの成長を取り込むこと、
飛躍的な生産性向上努力が必要となることが、述べられています。

特にアジアの成長の取り込みについては、
ガラパゴス化現象の反省に基づき、多少のリスクはあっても
有望な新興市場にはライバルより先に飛び込み、現地化することにより、
その地域に合った商品を供給することの重要性が述べられています。
また、品質の高い日本の農業製品は、付加価値の高い輸出品として、
有望であることが言及されています。

また、従来日本が得意としてきた性能向上・低価格だけでなく、
伝統的に日本人が持っている「洗練性」、「面白さ」、「もてなし」は、
海外からも評価されており、これを強みとして高付加価値化戦略の
基本に据えることの大切さが指摘されています。

さらには、将来の成長を先取りする重点分野として、
「グリーン(環境及び食糧)」、「ライフ(医療)」、
「シルバー(高齢者向け需要)」の3つが挙げています。


(3)税・財政・社会保障 分野
⑦ 財政健全化は先送りせず、政府方針を守れ
⑧ 若者の信頼を回復し、安心で持続可能な社会保障制度を確立せよ
⑨ 高齢社会に対応した社会システムに地域主体で変革せよ
⑩ 所得格差・貧困問題は就業促進と所得再分配で緩和せよ
⑪ 国と地方の役割分担を見直せ


「税・財政・社会保障」では、先送りはやめ、
速やかな財政健全化を図ることが強調されており、
経済成長と両立し得る税制、持続可能な社会保障制度、
高齢社会に対応した社会システムの構築、格差是正に早急に取り組むべきある、
としています。


(4)外交・安全保障分野
⑫ グローバル・ガバナンス-「ルールに基づいた開かれた国際秩序」を維持せよ
⑬ リージョナル・ガバナンス-「安定し、繁栄するアジア」を強化せよ
⑭ ナショナル・ガバナンス-日本は「自助」と「共助」で安全保障を確保せよ


「外交・安全保障」においては、2050年の日本が、
GDP規模6倍の二大超大国(米国・中国)に挟まれ状況に鑑み、
「自助(防衛力の強化、及びその基盤として産業力、技術力、経済力の強化)」
と「共助(日米同盟の強化)」により安全保障環境を確保しつつ、
アジア太平洋の安定と繁栄を主導していく必要がある、と指摘しています。


大きな構造変化は、すでに始まっています。
多少の時期のずれ、予測の修正はありうることですが、
大きな潮流は報告書にまとめられた方向にあると考えるのが、
妥当であると考えられます。

したがって、今の私たちの戦略的な意思決定や日常の活動が、
会社の将来を決めるといっても過言ではありません。

ご存じのとおり、すぐに状況が変化するこのような時代には、
分析に時間をかけすぎても意味がありません。

変化に果敢に挑む勇気をもち、仮説と検証をもって、冷静に、そしてピーディに
新しい時代に合った戦略経営で、会社の未来を切り開きたいものです。


※報告書は、経団連のホームページ(http://www.keidanren.or.jp/)に
一般に公開されておりますので、ご興味がおありの方は、ぜひご覧ください。

お問合せ